──政治ってどうお考えですか?

選挙には行った方がいい。

──もちろん。しかしながら、若い人たちが選挙に、政治に関心を持たないことが問題になっています

関心を持たせないようにしているとしか思えないけど。

例えば、日本の国の仕組みやルールみたいなことは、学校であまり習わないよね。もちろん三権分立や基本的人権などは習うとしても、なぜそうなのか。ということはあまり教育のカリキュラムには入ってない気がする。俺は経済学とか大学で習ってないから分からなくて、二十代で政治に興味もなく、独立して自分で仕事をとってくるようになって、会社のお金がどうやって回っているのか知った。複雑で専門的すぎて、これは義務教育では難しいなと思ったけど、大人になったら分かると思っていたものがこんなにも専門的なんだと知って、もっと早くに知っていれば、かなりの点でアドバンテージだったのになと思う。

──確かに日本では、給料から各種天引きされ、手元に残ったお金は自由に使えるのもあり、税金や社会のお金の仕組みには意識は低いですね

よく年収いくらですか?って車のローンやクレジットの与信枠の申し込み時に聞かれるけど、あれも税引後か額面かよく分からないもんね。

それと同じく、政治の役割も、さっきの三権分立ったって、司法、行政、立法ってもはや知識として知っていても、それがなんでなのかよく分かんない。よく分かんないけど生きていける。

んじゃあ、詳しいことは詳しい人に任せて。ってなるのも無理はないし、そもそもそれが人権を守るための意識は、これだけ文化的にも充実してなんら不自由のない暮らしができると、そもそも人権とは。というか、それを守るのは自分たちなんだという意識にならざるを得ない。

──コロナ禍では、日本の総理大臣や自民党の総裁選、10月の衆院選が注目を浴びました

注目っていうか、その注目って何を根っこに注目しているんだろう。

そもそもこいつは誰なのか!?って多くの人は不思議に思わないのかな。日本は権威が強すぎて、全部人気投票になってしまう。それだとコロナのように人の命が掛かった場面で本当に適切な人材がそこにあてがわれているのかが分からない。国全体がパニックになってるから、もう助けてもらうことが前提で、そりゃみんなが選んだリーダーたちがそれを仕切ってるんだから、助けてもらうのはある種当たり前なんだけど、結果論であいつはダメだ、こいつはダメだ、叩いて叩いて、それは本質的には自分に唾を吐いているのと同じだと分かってるんだろうかと思う。

──大人になってから政治に関心がなかったということですが、どういうことですか?

正直いうと、安定した職について欲しいという親の希望もあったり、公務員なんか死んでもなるか!という若気の至りもあったり、それは何も知らなくてそういってたようなもんだから、知ろうともしなかった。笑

学生時代、NHKの報道部でアルバイトをしていて、たくさんの事件や政治的局面を目の当たりにしたけど、あまり自分ごとのように思えなくて、来る仕事をこなすだけだったから「そんなもんか」っていう程度で、知ったようになってた。

誰かのバイアスが大きく掛かった状態での情報が氾濫して、それは今も変わらないけど、その中で受け身で情報を得ている時点では発見はなく、疑問も持たない。エンターテイメントとしてのメディアは、破綻していてもそれを面白くも映せるしね。

─どういうことで政治に興味を持ったんですか?

政治というよりかは、社会がどうやって回っているのかが不思議で仕方なかったから、自分で調べるようになった。正直、経済のなんたるかは語れるわけではないけど、リバースエンジニアリング的に一つの事柄を掘り下げて掘り下げて調べていくことで、枝葉は初めのきっかけの幹からどんどん広がって、多岐にわたって色んなジャンルの情報を横断する。

そうしたら「あれ?これを国がコントロールできてるの?マイクロマネージメントで?んなアホな」と思うようになった。

そもそも、政治って社会の秩序が乱れないように、支配者たる人間が人が何も考えずに生きていけるようにすることで、そう考えると今までの日本って抜群のバランス感覚でそれを保たれてるんだなと思うようになった。

アメリカに初めて行った時も、スラムを歩いてのほほんとしてたら、現地の知り合いに泣くほど怒られた。ここは日本じゃない。命をもっと大切にしろ。って。

中国人の友人も自国に家族がいるから国を離れられないけど、日本は本当に素晴らしいシステムがたくさんある。とも言ってた。

そこで、人間ていう集団が社会を作り、その社会を守るために政治があり、経済がある。とまぁ、学校や親からは習わないようなことを30代で思い知らされることになる。

個人的にはラッキーだったと思うけど、周りを見ても誰もそんな話はしていない。

社会は個人の生活と一心同体なのに。その事実は無視できないと思った。

──つまり政治に興味があるというわけではなく、社会を守るシステムとして政治に興味を持ったと

そうなるのかな。正直、自分が国民の代表になって国にものを申したいとは思わないので、まずそもそもそういう立候補する人のマインドは分からないけど、めちゃくちゃ興味はある。

今すぐ街頭演説は迷惑だし、正直何を言っているのか分からないので、制度としてやめた方がいいとは思うけど、なぜそれがあるのか、どうあるべきなのかは今一度考える必要はあるよね。

──確かに。街頭演説とか車で手を振るのって、あれなんでしょうね?

慣習が作ったもので誰も疑問に思わないのが問題だよね。

特に日本人は、日本という国にいながらの成功体験がかなり強くて、変える事に関しては消極的。なのに、言葉尻で「変えなきゃいけない」では、それがなぜそうなのかが分からないままなので本当に変えるのは難しいんだろうね。でも、若い人たちって、空気読んで「え?おかしくない?」とは思っているけども、声をあげて言おうともしない、したくてもできない環境下の人が多くって、結果そこで国として国力を削ぎかねない、削いだ結果社会の秩序が乱れかねない要因を作ってしまっているとも感じる。

だって、20歳の子に、ねぇねぇ、なんでこの人に投票するの?この人がダメならどうするの?どうやったら社会がもっと良くなるの?私たちが生きていく希望はどうやったらうまれるの?って聞かれて、全問回答できる大人って、果たしているんだろうか。

──私は自信ありません。笑

でもさ、答えはあるとしても、正解はないんだよね。絶対これをやってたら大丈夫って確証なんて何にもなくって、現代の教育のすごく大きいテーマで、「間違いか正解か」というものがかなり大きなウェイトがあるから、大きな人は「正解がある」ということを心の底から信じてしまっているんではないだろうか。

一緒に考えるということが著しく欠けてるよね。それは答えとしては、かなりいい答えだと思うんだけど。

──なるほど。そうですね。同じ目線で考えることはしていないですね。

詳しい人に聞いてみよう。あの人が言ってた。本に書いてあった。年長者は偉い。これ全部幻だからね。笑

──確かに。

これは「誰がやったか」はさておき、ある程度権威を明確にすることで、先生が言ってたから、テレビが言ってたから、政治家が言ってたからを鵜呑みにさせることで保たれてる秩序もあるということが裏にはあると思っていて、疑問を持たれると物事が進まないので合理的な方法としてコントロールされていると思う。

──誰にですか?

それが、幻だから!笑

──幻?

居ない誰かを作ることが人間という生き物にはできて、イデオロギーや文化的思想、宗教が虚構を生み、物事の解像度を高そうに見せてるんだと思う。

──お薬飲んでますか?

飲んでへん!

──虚構というのは、具体的にどういうことですか?

これは人類の保存のためのプログラムとしてDNAにインプットされているんだと思うんだけど、嘘をつけるのは、人間という生き物だけなんだよね。

猿も犬も花も科学も嘘はつけない。

つまり、「このままだと、大変な事になってしまう!」っていう情報の方が、「今のままで未来は繁栄する!」という情報より信じてしまうものなんだと思う。

俺もよくそういうことは流れで言ってしまうけど、この危機感こそが秩序を保つ最大の効果的扇動なんだと思う。

──確かに、それは感覚的には理解できます。

そう。でもね、その危機感が仮に虚構だったとしても、「よくするために人が動く」という目的を果たすためには、手段としては有効なんじゃないかな。

そして、今までは情報がインフラ的にも行き届いてないのが結果、統率を図るためには非常に有効だったけど、近年はもうスマホ一つでほぼ全部の情報にタッチできる。

先入観がなければないほど、成功体験が薄ければ薄いほど、情報にタッチした時の衝撃は大きい。

だから、虚構のあり方も変わっていくんだと思うんだ。

──それが政治と何の関係があるんですか?

ほんとだね。でも少なくともきっかけになる。

この世界は、誰かではない誰かが、このままではヤバいという虚構を生み出し、それを仮想敵とすることで動く。その虚構は他でもない自分達が作っているものだから、変えるのは自分達でしか変えられない。でも変えるったって、仮に今回の選挙で100%の投票率だったとしても、目に見えて何かが変わるわけではない。

でも、正直、投票なんか誰でもいいよ。責任なんか考えなくていい。そもそも選挙に対して積極的な人たちのコントロールの方が簡単だと思う。聞く耳がない人をどうにかするのってかなり難しい。

数字となって現れるものは、ある程度その理由を論理的に導き出せるもんだろうけど、エラーはエラーでしかない。残りの人が適当に投票したら、政治家は「このままではやばい」と思うんじゃないだろうか。誰でもない誰かの存在に脅かされるきっかけになる。

──めちゃくちゃ言ってますね

少なくとも、選挙が有権者の意見を反映できる唯一の手段だと思うし、そこは最後まで適当でいいだなんて全く思ってないよ。

でも、結局は「変えたくない」vs「変えなきゃいけない」の構図には変わりないからね。

──確かにそうですけど

だって、正直誰に入れていいか分かんないよ。こいつ誰やねん状態だし、比例区なんかそもそも仕組み自体がおかしいし、この人たちを真剣にやらせることが、まずはめちゃくちゃ大事だと思う。それは、誰に入れるかではなく、無関心にならないこと。

好き好んで代表者になってくれる人には、それが虚構だったとしても、そこには個人の意思や決意、思いみたいなものは少なからずあると思う。それは俺ら有権者が作ったものではなく、個人が作ったもので、それ自体は選挙権のあるなしに関係ない。

そして、国会にいって居眠りばかりだったとしても、投票率が上がると結果で勝負せざるを得なくなるから、頑張れと言わなくとも頑張るでしょう。

何だったら、投票所にサイコロ置いててもいいくらいだと思う。

──その辺にしておきましょうか

うん。ごめんね。笑