今回から連載形式でお届けする、Monogenic 伊丹谷大介との対談。
Think out of the box.「既成概念にとらわれず考える」をテーマに、ひととなりや今気になっている点にフォーカスを当てて、少しでも彼自身を知ってもらおうという連載です。
お相手は、実は伊丹谷大介自身です。笑

2014年初めて行ったLAで。(写真に意味はありません。笑)

──あなたについて教えてください

どうも口だけ番長です。笑。
2021年現在という言い方になるけど、クリエイティブジェネラリストとして活動しています。

──すみません、ピンと来ません。笑

ですよね。笑。おそらくこの国で俺しか言ってないと思いますし、ジェネラリストは所謂スペシャリストの対義語としての認識で、「スペシャリスト=職人的な専門職」に対して、知識や経験に基づきながら、さまざまな分野を横断して、万能的にプロジェクトをまとめ上げたり、クライアントと対話したり、仮説を通して目指すべき方向性に対して、具体的な方法論を提案したりしてます。

─ははは。わからないですね。笑

なんでやねん。・・・とは言いながらも、まだまだ名前負けしている点も多いので、自分の目指している職業という感覚でいます。ここまでいっておきながらもはや、職業というか、肩書きは意味を為さなくなってきてるので、ぼんやりとして余計に人には伝わりにくいというのは自認しています。

──職業、肩書きが意味をなさないというのはどういうことですか?

個人を認識するラベルとしては非常に有効だと思いますし、社会的な役割を明確にするという意味では意味があるのかもしれませんが、これからの社会のあり方の急激なスピードについていくためには、ピボットというか、何かを起点に能力を横断して貢献する能力というのが求められている気がします。おぉめちゃ真面目なこと言っとんなこいつ。

──なるほど。笑 確かに、特化した技能を持つ人がYouTuberをやったりすると、その能力に対する造詣の深さはもちろん、ファシリテートやトーク・プレゼン力みたいなものも必要になってきている印象はあります。

そうっすね。まさにいい例で、一つの職業では、限られたエリアでしか能力を発揮できない。それ自体はこれからも続くと思うのですが、将来テクノロジーやリモート、言語の壁を突破した際、人と人を繋ぐことのスピードや、漠然としたテーマに対して、自分の能力を発揮できるテリトリーにニーズが入ってくるのを待っているだけでは、圧倒的にスピード感に欠けてしまい、スペシャリスト的な能力を持っていたとしても、それは自分の持っているコミュニティに限定した能力となり、たとえば遥かかなたの異国でその能力を求めている人に届かなかったり非常に勿体無いことになると思います。勿体無いというのはちょっと言い過ぎかもですが、これから日本では人口減少や、少子高齢化が避けて通れないシナリオの中で、今までアドバンテージだった自国の規模は縮小していくので、必然的に市場は小さくなり、維持するという観点だけでは外に飛び出して自分で獲得していくことはできたほうがいいんじゃないですかね?

──意識高いですね

その言い方嫌いです。笑

──笑。そこでジェネラリストに「クリエイティブ」という形容詞的なワードを入れているのはどういうことですか?

もちろん、自分のキャリアが、デザインだったり企画だったり、クリエイティブな領域がメインというのもあるのですが、キャリアを二十数年積み重ねてみて、「クリエイティブ」というのがかなり変容しているように感じる。

──変容。

うん。過去にやってきたリミッツ(制限時間20分のアートバトル)というイベントでは、ちょうどSNSや世の中の変遷と睨めっこして内容をブラッシュアップしてたんですが、日本のアーティストと世界のアーティストの「クリエイティブ」という感覚の差にまず驚かされた。

2014年 LA ヴェニスビーチにて。あぁLA行きたい。(写真に意味はないです。笑)

──ほほう。

平たくいうと、日本のアーティストは「クリエイティブ」というのが、非常に特殊技能のような、それでいて個人のアイデンティティに直結しているような感覚であったのに対し、海外のアーティストは、常に周りにあることで、生活を豊かにするものという感覚で、そのことが非常に衝撃だった。

──確かにクリエイティブという言葉のイメージには、特殊能力的なニュアンスを感じますね

日本でも、インスタやライブ配信やアートのパフォーマンスをする人たちが増えてきたけど、例えばテレビに出ているタレントだったり、趣味でアート的な活動をしていた方が特に活躍している印象で、いわゆるクリエイティブな職業に準ずる方々は、それを斜に見ている印象です。別モン的な。もちろん目的としての「クリエティブ」を否定する気はないよ。アートや演劇、今でも非常に有効な分野はたくさんあり、これからも発展していくでしょう。
ただ、クリエイティブが「手段」になっている分野の発展を無視できない。俺の知る限りではあるけど、先述のパフォーマンスしている、新興の人たちは、従来のクリエイターに対して非常にリスペクトがある。

──確かにベタですが、HIKAKINさんはビートボックスで結構有名ですが、ガチのって言ったらおかしいのかもですが、プロビートボクサーに対して非常にリスペクトがありますね

うん。そして、あくまで一つの側面だけど、一般に受け入れられて、やらしい話が稼いでるのはどっちだろう。

──ね。言わずもがなですね。

もちろん、だから手段に変えろとまでは言わないけど、そういった人たちが「ヒューマンビートボックス」を大衆化していることには多大な貢献があることを否定できない。
これは、クリエイティブだけではなく、スポーツの分野でも言えるし、政治や金融の世界でも例外ではないと思います。

──確かに、フェーズが変わったというか、よくアップデートと言われる、2.0的な変容はありますね。

アップデート。笑 否定はしないけど、非常に受け身な言い方よね。環境が変わって、それに合わせて自分も変えていくという捉え方なんだろうけど、もっといえば、その環境は人が変えているものなので、気づいたら周囲が変化していた!みたいな状況が実際だと思う。

──わかりやすいじゃないですか!笑

意識高いですね。笑

──もういいです。

すねんなや。笑
話を戻すね。

──はい。

俺は、実にほぼ4年ごとに職業を変えてるんです。飽き性なのか同じことを長く続けられなくて、すぐ違う世界を見にいきたくなってしまう。
学生時代、3年間はほぼメディアの世界で働いていて、次に4年間、化粧品やパッケージデザイン、ブランディングの世界。東京に出て、アパレルのカタログや、それこそ当時Web2.0と言われたウェブデザインの分野で働き、次の5、6年は大阪でイベント企画や事業開発。
コロナ前までの4年は、先程のリミッツというイベントでエンタメにどっぷりで自分の中ではやり切った。
そこでコロナが来たので、環境を一新し、事業という意味では今までの分野を生かした仕事って考えたときに、「全部やりたい!」なので、今まで自分の能力を横断して活用できる環境を作ろうと思ったのね。

──それがクリエイティブジェネラリストというわけですね!!!

強く言われると恥ずかしいね。笑

──普通は、クリエイティブな分野の人たちって、そんなに頻繁にフィールドというか環境を変えないんですか?

あくまでも俺が会って来た人に限定するとそういう印象。もちろん、この道20年!という人たちには、非常に高い能力を感じるし、職人気質な人も多くクオリティも高い。逆立ちしても勝てないなと思う人も多いし、リスペクトしかない。
ただ、俺にできることとはなんだろうということを考えたときに、こんなすごい人たちに、新たな活躍の場を与えられたら、どんなすごいことだろうとは感じた。
でも悪い点で言えば、頑固だし、視野が狭い。怒られるわ。

矜持を持って何かに取り組む姿勢は大好きだし、見ていて飽きない。世界的にも、日本の「何もないところに命をかけて挑む」という職人的な姿勢は評価しかされてない印象。そしてそれを守ることも非常に大切だと思う。

──禅や伝統工芸は評価されている印象ですね。

ですね。でも、おそらくもっと世界に知られるべきとは思います。それで仮に自分が思っている評価ではなかったとしても、仮に本物であれば余計に光りだすし、悪いものは淘汰される。時代に合うものは過大評価されて、未熟なものは新しい努力のモチベーションになる。そういう性善説的な循環を信じてます。

──今までなんでなかったんですかね?

あったと思いますよ。例えば言語の壁だったり、島国特有の思想だったり、工業主体の経済成長だったり、言い出すとキリがないけど、よくいうガラパゴス化されて特殊なものができちゃったというものを、誰もどうにかできなかったんだと思う。

──クリエイティブの産業は昔から国内需要だけでそれなりの経済規模があったんですもんね。

確かにそれも大きな要因だと思うけど、俺は日本のクライアントの教育が本当になってないと思う。

──どういうことですか?

まず発注者が素人のケースが多い。素人だからプロに頼むのはいいとしても、それは依頼する分野だけで、例えばその制作物を作ることで「どうなりたいのか」「何がしたいのか」が考えられていない。クライアントの担当者も会社員だから、「売り上げを上げる」とか「安くあげる」という考えは仕方ないものかもだけど、ああ、でもそこは仕事を請ける方にも問題があって、社会がどういう構造で、相手の立場や状況を理解しないで話をしているケースが非常に多い気がする。

──よく耳にしますね

ほんと?分かってんだったら解決しろよとは思うけど、双方の環境を劇的に変化させることは現実的には難しいところもあるから、そこに翻訳者だったり、ディレクター的な人員を配置すべきだと思うんだよね。そうしたほうがトータルのコストは安い。
けど、形のないものに金銭が発生するのは非常に避けたがる傾向が大なり小なりあって、それに安心が担保されてれば別の話なんだろうけど、安物買いの銭失い的なケースが多い気がする。
もしくは、逆のケースもあって、相場が分からないから言い値で買って成果が出ない。
こんなものでは誰も幸せにできないし、仕事としても終わってると思う。

──終わってる。笑

今は個人でもクリエイティブの分野で副業や兼業する人も増えて来ているし、さっきのインスタなんか個人レベルでちっさい広告代理店より結果出しちゃうくらいのケースがあって、パッと誰もが気づくレベルで世の中変わっていくのではなく、徐々に侵食するように練り変わっていくんだと思う。
あぁ変わっていくなぁと感じて変われないのは仕方ないとして、大丈夫だろうとか安心を買って担保してるようでは取り残されるのは時間の問題だと思う。

──辛辣ですね。

それが現実やからね。でも悲観しないで、徐々に変わっていければいいし、変わりたい人のお手伝いができたらなと思う。

単純にそのほうが楽しいし、クライアントにしてもクリエイターにしても、その人が本当にやりたいことに集中できると思う。

──間違いないですね。

とはいえ、俺も島国で視野も狭いし、英語もろくに話せない。
これから大小問わず色んなものに関わって、考えて、問題解決していけたらいいなと。

──なるほど。ありがとうございます。今後もこういったお話を引き続きお話していければと思います。今日はこの辺でまた次回、よろしくお願いします。

へい。よろしくお願いします。お腹減りました。

──食べてください。

食べます。